マウス巨核球系前駆細胞(CFU-M)をpokeweed mitogen刺激脾細胞培養上清(PWM-SCM)とerythropoietin(Epo)の存在下で培養し、誘導される巨核球ではendomitosis(DNA量増加)はみられるが胞体成熟はともなわず、血小板産生に至らない。本研究ではCFU-M由来の培養巨核球を培養5日目にPercollの比重遠心法により分離、精製後、純化thromlopoielin(TPO)、米国Hipple癌研究供与)の存在下で2日間培養し、巨核球に生ずる変化を形態的側面(透過電顕と走査電顕)と生化学的側面(血小板第4因子)から検討した。対照としてマウス骨髄より分離した正常巨核球を用いた。透過電顕では巨核球をtypeI(早期未熟型:血小板分離膜の初期像のみを認める)、typeII(未熟型:分離膜が限局性に発達)、typeIII(血小板野有り)に分類し、走査電顕では樹枝状突起を有する巨核球の比率を算定した。正常巨核球ではTPO添加前ではtypeI、II、IIIの比率は5.0%、55.0%、40.0%であり、TPO添加後は0%、10.0%、90.0%と成熟型の著増を見た。一方、培養巨核球ではTPO添加前では45.0%、55.0%、10.0%と未熟型の比率が高いのに対し、TPO添加後では10.5%、45.5%、44.0%と成熟型への変換が認められた。走査電顕の観察ではTPO添加前の正常巨核球では樹枝状突起を有する巨核球が20.5%であり、TPO添加後では72.5%に増加した。培養巨核球ではTPO添加前では樹枝状型が0.5%と極端に低値であったが、TPO添加後は31.5%に増加した。以上の結果から、巨核球が血小板産生型に変換させるためにはTPOが不可欠であり、血小板産生型に変換する過程は巨核球胞体に血小板分離膜が全体的に発達し、同時に胞体から樹枝状突起がのび血小板が放出されると推察された。血小板第4因子の測定ではTPOを添加した場合、正常巨核球では前値の3倍に上昇したが、培養巨核球では1.5倍の上昇にとどまった。この原因については更に検討する必要があると考えられる。
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