イワシの体油よりエイコサペンタエン酸を精製し、トリグリ型とした。静注可能となるよう、卵黄リン脂質でエマルジョンとし、さらにグリセリンを加えて浸透圧を調節した。3〜3.5kgのラビットへ、このエマルジョンを30ml(EPA3g)を耳から静注したところ、24時間後には多形核白血球リン脂質分画のEPAは22〜92ng/10^7個まで増加した(静注前はほとんど検出されなかった)。一方アラキドン酸は全く変化しなかった。これによりEPAの静注により白血球にEPAが取り込まれることが判明したので、次に静注6、24、168時間後に白血球をとり、カルシウムイオノフォアで刺激し、ロイコトリエンB_4(LTB_4)およびB_5の産生を高速液クロで測定したところ、6、24、168時間後には静注前のそれぞれ60、72、86%となり、6時間後では有意差があった。さらに、静注後0〜6時間でLTB_4の生産がもっと低下していないかを調べるため、静注1、6時間後に同様の実験をしたところ、1時間後には前値の77%、6時間後には42%(p<0.05)となり、6時間後がLTB_4が最低となった。LTB_5(LTB_4の1/30の作用しかない)は逆に6時間後に最大値となった。コントロ-ル実験として市販の大豆油を原料としたエマルジョンを静注したが、LTB_<4/5>の白血球による産生に全く変化は見られなかった。LTB_4は白血球の遊走能、凝集能、顆粒放出能が強く、急性炎症(急性心筋梗塞や移植臓器拒絶反応を含む)の組織破壊に直接関係ある。LTB_4の抑制は上記疾患のコントロ-ルに重要であるが、今まで短期間で効果のある方法がなかった。EPAエマルジョンはこの点で臨床応用が期待できる。
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