特発性血小板減少性紫斑病患者(Y.A.)から得た血小板のコラ-ゲン受容体を認識する抗体(Y.A.IgG)を用いて同受容体を検討し、以下の成績を得た。 1.対応抗原(コラ-ゲン受容体)の検討、Y.A.IgGの認識する血小板膜蛋白はイムノブロット法でも分子量62kDa(還元)であり(P62)、免疫沈降法での既報(Blood69:1712、1987)の成績と合せてこの膜蛋白P62が抗体の認識する特異蛋白(コラ-ゲン受容体)と考えられる。P62に不溶性コラ-ゲン(I型)が特異的に吸着したことから、その機能的意義も示唆された。Y.A.IgGはウサギ血小板をも凝集したことからP62は種族特異性に乏しいことが示唆された。ヒト巨核芽球系細胞株(CMK)とY.A.IgGの反応(間接蛍光抗体法)で、約60%の細胞に抗原の発現が認められたことから、巨核球系幼弱細胞にもコラ-ゲン受容体の発現が示唆された。 2.Y.A.IgGを用いたイムノアフィニティ-クロマトグラフィ-によるP62の分離・精製、Y.A.IgGのFab部分をカップルさせたセルロファインに、可溶化した血小板膜標品を反応させpH2.5での溶出蛋白をWGA-アガロ-スカラムに添加・洗滌後D-アセチルグルコサミンで溶出した。溶出された糖蛋白をSDS-PAGEで展開し、ゲルの銀染色では複数の蛋白バンドが検出され、Y.A.IgGを一次抗体としたイムノブロット法ではP62の存在が認められた。したがってP62がWGAに結合する糖蛋白であることが判明したが、さらにHPLCやpreparative SDS-PAGE等を併用して分離・精製をすすめる必要がある。 3.本患者のリンパ球による抗血小板コラ-ゲン受容体単クロン抗体(MoAb)の作製、患者リンパ球のEB virus transformantとAC33を細胞融合させて得たヒト-ヒトハイブリド-マのクロ-ニングによりMoAbを得た。本抗体はヒト血小板のコラ-ゲン刺激による凝集・放出反応を制御し、コラ-ゲン受容体と密接な関連を持つことが推察された。今後このMoAbの反応抗原を明らかにし、コラ-ゲン受容体の分離・精製に利用したい。
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