作年度TcRδ鎖遺伝子解析は単一性の照明に有用である事、Tリンパ系特異性はそれ自身では無いがJhとの併用で有効となる事、さらにTcR遺伝子の中で最も早期に再構成を示す事などを報告した。今年度は、より詳細なδ鎖再構成パタ-ンの解析・さらに他疾患での解析・mーRNAレベルでの解析を試みた。1)BーALL/LBLでのδ鎖再構成特異的所見:再構成パタ-ンをBaM HI処理DNAで検討し、δ鎖再構成を有するBーALL/LBLに共通の再構成バンドを確認した。Pstー1処理DNA分析によりこれらはJ領域の関与しない再構成すなわちVDかDDであることが示唆された。2)TーALL/LBLにおけるδ鎖再構成:BaMHI処理DNAでδ鎖再構成バンドはB系と異なり殆どが他の再構成バンドを呈した。再構成様式としてD・DJ・VDJなどが示唆された。幼若から成熟分化するに従いDD・DJからVDJとTリンパ系では再構成が完成する事が推察された。3)δ鎖再構成を示す例においてもRPM18402のT細胞株などで発現の見られない例も存在した。4)T細胞は発生過程のおいてδβT系とγδT系の異なるlineageで独立し分化していく事が報告されている。しかし我々はその共通する細胞はpreーT細胞レベルであろうと推察している。Tリンパ腫・ATL/ATLLの殆どの症例、ホジキン氏病・AILDでT細胞系と考えられた殆どの症例はαβT細胞系の腫瘍化が示唆された。5)δ鎖遺伝子のConstant領域を完全に欠失しβ鎖再構成を伴うものはαβT細胞系と考えられるが、その中にα鎖遺伝子発現の陽性と陰性が存在する。後者はpreーαβT細胞と位置づける事ができる。6)Bーリンパ腫・骨髄性白血病では、約15%にδ鎖再構成が見られた。慢性白血病の急性転化の中にT・B共通幹細胞レベルでの異常クロ-ンの増殖を示唆する例が存在した。
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