生体防御機構における顆粒球メダラシンの意義を明らかにするため、以下の研究を行った。 1.単球機能に対するメダラシンの影響。メダラシンは単球の遊走能を阻害し、活性酸素産生能を増大させるが、単球の抗腫瘍活性に対する影響を調べた。その結果、ヒト単球浮遊液に微量のメダラシンを加えて37℃60分間インキュベートし、培養し、A-549細胞を標的細胞として^3H-サイミジンの取り込み能の減少で細胞障害活性を測定すると2日後には細胞障害活性が増大し、約1週間その状態が維持された。2週間後にはコントロールと差が認められなくなった。ヒト単球をメダラシン処理し、その直後の上清、あるいは24時間培養後の上清を標的細胞に添加してもメダラシン処理した細胞の上清とコントロールのそれとには標的細胞の^3H-サイミジン取り込み能に対する影響には差違が認められなかったことから、単球の抗腫瘍活性に対するメダラシンの増強作用は可溶性因子の産生を介さないと考えられる。至適メダラシン濃度は、30mg/mlであり、これは生理的濃度である。 2.activated killer細胞誘導作用。ヒトリンパ球にメダラシンを作用させるとそのナチュラルキラー(NK)活性が増大するが、同時にNK細胞に感受性のない標的細胞を傷害する活性(activated killer)が誘導されることがわかった。この誘導はメダラシン処理後24時間で最大となり、その後徐々に低下したが、約1週間は持続した。ヒトリンパ球をメダラシンと37℃、60分間処理する場合20mg/mlのメダラシン濃度が至適であり、これは生理的濃度と考えられる。 3.メダラシンインヒビターの精製。ヒト骨髄細胞内にはメダラシンに対する低分子インヒビターが存在するが、これを精製した 32個と34個のアミノ酸よりなるペプチドで、阻害活性は強くはなかったが、非拮抗阻害を示した。合成したこれらのペプチドも同程度にメダラシン活性を阻害した。
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