現状は赤血球前駆細胞の分化調節に関連したペプチドの精製の最終を段階に入ったところである。精製の手順としては、(1)DEAEセルロース及び(2)リン酸セルロースカラムクロマトグラフィ、(3)Sephadex G25ゲル濾過の3ステップで、出発物質・ウシ胎児血清(Fcs)より比活性にして約1000倍精製された標品を得ている。HPLCを用いたゲル濾過(Protein Pak60)及び逆相クロマトグラフィー(μBondasphere C_<18>)による分析からSephadex G25画分には未だ5〜6種のペプチド性物質が混在していること、抑制活性の推定分子量は約3000であること等が判明した。 さて、本研究は(1)FCS中にヒト赤血球前駆細胞BFU-E及びCFU-Eに対する分化抑制活性が存在する。 (2)その抑制活性は活性炭処理により除去可能である。 (3)抑制活性はヒト赤血球前駆細胞に対してのみでなく、マウス赤血球病細胞の自発分化及び化学分化誘導に対しても抑制効果のある分子量3000〜5000のペプチド性物質である。等の基礎的研究成果にもとづいたものである(参考文献参照)。したがって、分化を特異的に抑制する物質の精製という研究課題を掲げた。しかし、精製を進めるに従って細胞増殖に対する抑制活性が主としてとらえられ、当初のねらいに困難性を生じている。云いかえれば、生物学的データとして得られてきた赤血球前駆細胞に対する特異的な分化抑制あるいはその解除をみた現象は単純な機作によるものでなく、複数の因子が関わる複雑なプロセスを反映した現象であると思われる。今後は、細胞増殖抑制を通じて赤血球分化に対して抑制的に働くペプチドの精製を進めると共に、見出された増殖抑制活性が顆粒球・マクロファージ系やリンパ系等の細胞に対していかなる効果を有するか等を明らかにする細胞生物学的研究の同時逐行が求められていると考えている。
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