研究課題/領域番号 |
63570603
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
中島 祥介 奈良県立医科大学, 医学部・第一外科, 講師 (00142381)
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研究分担者 |
中野 博重 奈良県立医科大学, 医学部・第一外科, 教授 (20075071)
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キーワード | 肝移植 / primary non-function / 肝代謝機能 / 動脈血中ケトン体比 / pyruvate / Lactate比 / 総遊離血漿アミノ酸 / アラニン |
研究概要 |
犬同所性同種肝移植を実験モデルとして、肝移植におけるPrimary non-functionの早期診断に関する研究を行い、以下の結果を得た。 1.犬同所性同種肝移植において、生体肝を移植した場合には、最悪231日と長期生存し移植肝のviability良好群とした(I群、n=5)。屍体肝(20ー30分温阻血障害肝)を移植した場合には、全例5日以内に肝不全死し移植肝のviabity不良群すなわちprimary non-function例とした(II群、n=5)。以上の2群について、移植肝への血流再開後の肝代謝機能の変動を中心に比較検討し、移植肝viabilityの早期判定を試みた。 2.肝エネルギーチャージと良く相関すると考えられる動脈血中ケトン体比は、術前に1.21±0.07(n=10)であるが、無肝期には0.58±0.04と著明に低下した。移植肝に血流再開後はI、II群とも回復しはじめ、1時間後には1.00前後となる。しかしながら3時間後にはI群1.27±0.16と術前値にまで回復したのに対して、II群では再び著明に低下して0.68±0.09となった。 3.pyruvate/Lactate(P/L)比は、術前0.056±0.003で、無肝期には0.040±0.003となった。血流再開3時間後I群では0.055±0.004と回復するのに対して、II群では0.021±0.002とさらに低下し、糖の完全酸化の抑制を示した。 4.総遊離血漿アミノ酸は、無肝期に術前の125%に増加した。血流再開後I群では減少しはじめ、3時間後には83±7%とほぼ術前値にまで回復した。II群では血流再開後も増加し続けて、3時間後には151±11%となった。個々のアミノ酸ではアラニンの変動が顕著で、II群ではグルコース・アラニン・サイクルが抑制されていることが判明した。 以上の結果より、動脈血中ケトン体比、P/L比、総遊離血漿アミノ酸アラニンの変動を観察することにより、肝移植におけるprimary non-functionを、移植肝への血流再開3時間後には判定できる可能性が示唆された。
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