研究概要 |
[肝移植におけるPrimary nonーfunctionの治療に関する研究] 現在,肝移植におけるPrimary nonーfunctionに対する治療は,唯一再移植であるとされる.しかしながら,ただでさえgraftの供給が十分でない現況にあっては一つとしてgraftを無駄にはできない。今回,Primary nonーfunctionの治療としての肝補助の可能性について検討した。 (1).犬同所性同種肝移植を実験モデルとし,Primary nonーfunctionは温阻血障害肝を移植することにより作成した。 (2).温阻血障害肝移植(33℃,20分)では,5例中全例が血流再開19時間以内に肝不全死した。肝機能は血流再開後回復するかに見えるが,3時間後以降急速に低下した。 (3).動脈血中ケトン体比(昭和63年度研究結果)が低下する血流再開3時間目より、活性炭を用いた吸着潅流による肝補助を試みた。静脈間潅流を行ったが,肝機能が低下し始める3時間後からの開始では,逆に循環動態の悪化を認め,5例全例とも無処置群同様,肝不全にて血流再開24時間以内に肝不全死した。 (4).Primary nonーfunction診断後に行った活性炭吸着による肝補助での救命は因難であるものと考えられた。移植直後より行うことにより救命率は上昇するもかもしれないが,診断前であることもあり実際的ではない。 (5).現時点では,平成元年度研究で示したごとき予防的対策が重要であるものと考えられた。一方,今後さらに別の肝補助,例えば血漿交換等についても検討する必要があるものと考えられた。
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