創傷治癒の一過程である肥厚性瘢痕と線維芽細胞の腫瘍性増殖を示すケロイドの相違は組織学的に鑑別不可能であるというのがこれまでの定説となっていた。我々はこの両者の臨床的な特徴から、ケロイドが毛嚢に何等かの関係を有していることを認めた。すなわちケロイド患者の66%に毛孔性苔癬が合併しているのがわかった。ケロイドを有しない者での毛孔性苔癬の発症率は2%であり、ケロイドと毛孔性苔癬との関係は極めて高いものといわざるを得ない。さらにケロイドを合併している毛孔性苔癬の病理組織像ではケロイドにみられた真皮乳頭層のリンパ管拡張がある症例での毛孔性苔癬の真皮乳頭層にもみることができた。毛孔性苔癬以外の毛の異常として毛嚢炎や前胸部の多毛症を加えるケロイドとこれら毛の異常疾患との合併率は80%以上に及んだ。 一方、人ケロイドから分離した線維芽細胞は血漿成分に対して遊走性を示したが、毛嚢角質成分に対してはまだ明確な知見を得るに到らずひき続き研究中である。
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