創傷治癒において線維芽細胞の役割ははなはだ重要である。線維芽細胞の増殖なしには創傷治癒は生じないが、他方線維芽細胞の過形成は臨床的にケロイドや肥厚性瘢痕そ生じて好ましくない。適量の線維芽細胞増殖が適当な期間生じることが理想的である。 そこで創傷治癒初期に必要な線維芽細胞の遊走と瘢痕形成期。線維芽細胞増殖の抑制機序を解明することが重要と思われる。 ヒト正常皮膚、ケロイドおよび肥厚性瘢痕から抽出培養した線維芽細胞の遊走因子に対する反応を検討した。遊走因子として性ホルモンをとりあげた。ケロイド由来線維芽細胞はテストステロンに有意の遊走能を示し、肥厚性瘢痕由来線維芽細胞はエストラジオ-ルに有意に遊走能を示した。正常皮膚由来線維芽細胞は一定の傾向を示さなかった。 一方ケロイドと毛孔性苔癬との合併率をしらべると的例のケロイド患者の中42人、62.8%に毛孔性苔癬を認めたが非ケロイド者451人の中5人1.1%のみが毛孔性苔癬を有した。 テストステロンは毛育成に関与し、毛孔性疾患としての毛孔性苔癬とケロイドとの高合併率、他の毛嚢性疾患とケロイドとの高合併を考慮する時、ケロイド発症と毛嚢との関連が強く示唆される。
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