肝硬変を合併する肝癌症例に対し、術前・術後1日目、7日目に安定同位元素^<13>Cで標識したアミノピリンを投与し、2時間内に代謝され呼気中に排泄された^<13>CO_2を測定する事により肝ミクロゾーム機能の推移を検討した結果、術前の肝ミクロゾーム機能は正常肝症例に比べて著明に低下していた。肝部分切除術症例(n=19)の術後の推移をみると、ミクロゾーム機能は術後1日目は低下し、7日目には回復傾向を示した。この術後1日目の低下には一定の有意(P<0.001)の傾向が認められy=102l^<0.16x>(y:術後1日目の回収率、x:術前回収率)の式をもって術前値より術後1日目の値の予測が可能となった。また全症例とも耐術したが、1例も回収率は1%以下とならず肝不全も認められなかった。一方肝動脈塞栓術症例(n=12)でも塞栓術施行前後の推移をみると肝部分切除術症例と同様の傾向を示し、更に術前値が1%以下であった1例は施行後に肝不全となって死亡した。 以上の結果より、肝不全となる危険域は^<13>Cアミノピリン呼気テストよりみると、2時間回収率1%以下であると思われた。また肝予備能とは手術等の負荷がかかった時にこの危険域までにどれだけ余裕が残されているかを表しているものと思われた。更に今回の検討により術前・術後の値に有意な相関を認めた事より、術前の回収率が1.5%以上であれば肝不全の危険性は少なく耐術可能ではないかと思われた。
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