研究概要 |
肝癌治療用レーザ装置は,遠赤外のNd-YAGレーザ(波長1.06μm)を,細茎石英ファイバーの先端部で球状に拡散させ,肝癌を選択的に球状に凝固させる装置であるので,その熱作用の解明は重要な課題である。我々は,等間隔に配備された肝深部温分布連続計測システムを開発し,レーザー深部照射時の温度変化につき一連の研究を行ってきた。レーザ凝固層外縁の温度は約60℃であり,中心部の黒色炭火層の温度は約200℃となることは既に報告してきたが更に,超音波像との関連でレーザファイバーの先端周囲に形成される空洞が,凝固層に対応する高エコー域の内側に認められる音響陰影を併った低エネルギー域として認められることや,実際に形成これるレーザ凝固層の最大径が,高エコー域よりも2〜3mm,大きく観察されることが明らかとなった。原発性肝癌や,転移性肝癌に対する,レーザ球状凝固法の臨床応用も,実験と併行して注意深くすすめられている。レーザ球状凝固がすすむにつれて,凝固層の周辺の脈管に微細なガス粒子が拡散してゆくさまが,エコーにて描出されており,この小気泡が,周辺肝細識に如何なる影響を及ぼすかといった点は臨床上重要な問題点である。63年度に予定していた肝動脈内特殊カテーテルを用いたレーザ球状凝固時のドレナージベイン温度モニターは,実験器具の遅れから3月以降となった。そこで,今年度はレーザ照射中のガス吸引システムの改良と,肝内部血行遮断による肝深部温分布の変化につき検討を加えた。前者では10cmH_2Oの陰圧の耐えるカニューレを改良し,手術用吸引装置に接続させる工夫を行った。後者では,レーザファイバーの先端から前方7mm後方7mmの2点での温度変化を計測した。肝内部血流遮断により,温度上昇速度は速くなりレーザ照射終了後の温度下行速度は著明に遅くなった。術中超音波観察でも,小気泡の周辺拡散が著るしく減少しており,Pringle法の応用でより安全確実な治療法となる。
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