研究概要 |
YAGレ-ザ球状照射治療は,レ-ザを肝臓癌に対し球状に照射し,その熱によって癌組織の破壊を図るものであり,切除不能な肝癌に応用され,注目されている。 この治療法を安全かつ確実に行うためには,レ-ザ照射時の組織の温度分布を正確に把握し,照射するレ-ザ出力と温度分布の関係,ならびに,必要とされる球状凝固領域を得るために要する照射時間を明確にすることは重要なことである。そこで我々は,温度計測部である針状熱電対(銅コンスタンタン)37本,温度デ-タ集録部であるデ-タロガ,制御・処理部であるマイクロコンピュ-タ-から構成される計測システムを作成し,レ-ザ照射時の組織の温度上昇及び,温度分布について測定し,検討を行った。雑種成犬を用いて,レ-ザ出力(5W,10W)と温度上昇領域の拡大停止時間及び,温度分布を測定した。 また,連続照射における血流による冷却効果を確認するため,肝門部血行を遮断した時と,遮断しない時の組織温の上昇及び,温度分布を測定した。その結果,温度上昇領域の拡大停止時間及び,その領域はレ-ザ出力に応じて大きくなることが確認された。また肝門部血行を遮断した時は,遮断しない時に較べ,組織の温度上昇が速く,さらに高温に達した。この肝門部血行遮断を行う方法を用いると,より短時間で癌を治療できるので,大きな腫瘍や肝機能低下患者の治療時に有用であると思われた。本治療の安全性を図るため,カテ-テル型熱電対を用いて,肝静脈内連続温度計測も行ったが,いづれの場合も,有意な血液温の上昇は観察されなかった。60℃等温線の拡大は,出力2Wの連続照射では直径約1cm,出力5Wの場合には直径約3cmで停止した。この現象は肝の熱伝導や血流による冷却効果が加えられ,レ-ザ-エネルギ-とバランスするためであると推察された。また,肝組織の壊死領域が一週間後,わずかに拡大することからPeripheral Laser Hyperthermiaの存在が推測された。
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