研究概要 |
これまで,私達は、胃癌の核DNA ploidy patternが胃癌の浸潤増殖形式やEpidermal growth factor(上皮増殖因子、EGF)の発現と密接に関連することを明らかにしてきた。今年度は、EGF、およびEGFのレセプタ-(EGFR)の胃癌における免疫組織局在を酵素抗体法(ABC法)を用いて検索し、ploidy patternとの関連性を検討した。また、新鮮切除材料が採取できた進行胃癌22例について、癌遺伝子(C-myc,Ki-ras,v-erbB)の増幅を分子生物学的手法(Southern blot hybridization)を用いて検索し、ploidy patternとの関連性を検討した。対象は1989年3月より1990年3月までの胃癌手術例43例である。ploidypatternは、stem cell lineの差異により、diploid(二倍体、D型)とheteroploid(異倍 体、H型)に分けた。(成績)1.ploidy patternは、D型20例とH型21例に分けられた。2.EGFとEGFRの発現頻度:EGF陽性症例は、16/43例(37%)で、進行癌(14/26例、54%)では早期癌(2/17例、12%)に比べ有意に発現頻度が高かった。EGFR陽性例は、5/43例(12%)であり、すべて深達度ss以上の進行癌で、EGF陽性例であった。3.ploidy patternとEGF、EGFRの発現頻度:EGF陽性症例は、D型の癌(6/20例、30%)に比べ、H型の癌(9/21例、43%)で多い傾向にあった。また、EGFR陽性例も、D型(1/20例、5%)に比べ、H型(4/21例、19%)で多い傾向にあった。4.癌遺伝子:C-myc、Ki-rasの増幅例は1例もなかった。v-erbBは3例(14%)に増幅が見られ、すべて未分化型の進行癌で、ploidy patternがH型で、EGF陽性の症例であったが、うちEGFR陽性は1例のみであった。(結論)未だ、検討症例が十分ではないが、EGF、EGFRの発現やerbBの増幅が、胃癌のDNA ploidy patternにおけるheteroploidの出現と関連していることが示唆される。今後は、さらに、症例を重ね検索し、特にEGFRの遺伝子であるerbBの増幅との関係について検討して行きたい。
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