ラットにチオアセトアマイドを週3回腹腔内投与を10週間施行することにより、ヒト乙型肝硬変に類似した硬変モデルを作成した。その作成過程の4週、8週更には、より肝硬変の程度の強い17週モデルにおいて、ICGクリアランステスト、核DNAヒストグラム及びBrd Uによる2発色法による細胞周期の解析、更には、肝細胞膜を分離し、膜の流動性について検討した。ICGクリアランステストでは、4、8、10週と硬変作成過程で、除々に低下し、正常の0.161から0.066と10週では著明に低下した。一方、核DNAヒストグラムでは、2C細胞核が、22%から、除々に増加、10週では57%と増加、逆C、4C細胞核は、64%から32%へと低下し、細胞周期からみる限り、硬変肝細胞は、成熟細胞に富む状態となり、更に、再生を表現するS期細胞の増加は0.4%から、1.9%の漸増に留まった。一方、細胞機能を総括的に表現する膜の流動性を示すDPHにより標織されたP値は、0.262から0.280と増加を示し、膜の流動性は上昇を示した。一方、チオアセトアマイド投与中心により、上記いずれも正常化の方向を示し、可逆性の変化と考えられ、ラットモデルとヒト肝硬変の違いを示した。一方、正常ラットに肝切除を行なうと、DNAヒストグラムでは、術後24時間目よりS期細胞が9.9%にまで増加、48時間では、低下傾向を示すが、脾摘により、48時間後でも、同程度の上昇を示した。一方、膜の流動性についてみると、P値は、6時間後より下降し、12時間では、正常の0.26から0.22にまで低下し、膜の機能的変化は、核酸合成のピーク前に発生することがわかった。現在、肝硬変モデルで、上記示標について、脾摘の効果を検討中である。
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