肝硬変時における脾摘の再生に及ぼす影響について以下の実験を行なった。ラットにチオアセトアマイド(200mg/kg体重)を週2回3ケ月間腹腔内投与することにより、肝硬変を作製した。肝硬変に至る過程を肝細胞膜流動性及びフロ-サイトメトリ-を使用したBrdV及びPropidium Iodideを用いた2発色法により細胞動態を検討した結果、肝硬変の進行とともに膜流動性が低下、更に、ラット正常肝細胞は4C優位であるが硬変の進行とともに2C優位に変化した。S期細胞は、正常肝で0.5%前後であるのに対し、2.5%前後と軽度増加していた。当初予定していた70%肝切除によりラットは、2日後には、約2/3が死亡した。脾摘の有無による生存率の差は認められなかった。死亡率が高いため当初の予定であった70%肝切除を50%肝切除術モデルに変更した。これにより、90%以上の生存率が得られた。以上の結果は、ラットでも硬変肝の大量肝切除は、致死的であることが明らかになった。50%硬変肝切除における摘脾の効果を肝再生及び肝細胞膜機能面より検討した。肝細胞膜流動性については、硬変肝でも肝切除後には上昇することがわかり、再生に対応していた。しかし、脾摘の膜流動性に及ぼす影響は有意には認められなかった。一方、肝再生の細胞動態であるS期細胞は、術後24時間、48時間共に6%前後認められており、硬変肝でも再生することが明らかになったが、その程度は、正常肝の約半分であった。しかし、目的とした肝再生に及ぼす脾摘の細胞動態に及ぼす影響は、有意には認められなかった。以上より、脾摘の有無は、生存率、膜流動性、細胞動態に明らかな変化は示さなかった。
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