肝硬変肝切除時における脾摘の再生に及ぼす影響を目的とした。肝再生時での細胞動態及び細胞膜機能としての膜流動性の変化を正常ラット70%肝切除モデルで検討した。70%肝切除により、フロ-サイトメトリ-による二発色法のDNAヒストグラムは、S期細胞が術前の0.1%から13%へと24、48時間で上昇、以後斬減した。一方、細胞膜流動性は、DNA合成の始まる前の、肝切除後6時間より上昇し始め、24時間でピ-クを示した。一方、チオアセトアマイド週3回10週間の腹腔内投与により肝硬変を作成、その過程における肝機能、細胞動態及び細胞膜機能について検討した。肝機能としてのICG-K値は、週経過とともに低下、10週では、正常の半分に低下した。同様に細胞膜流動性も正常に比べて低下し、膜機能障害が肝硬変の発達とともに発生することが明らかになった。一方、細胞動態から検討すると、ラットでは、正常では4C優位のDNAヒストグラムを示すが、肝硬変の発生過程で2C優位へと移行した。このような肝硬変ラットに70%肝切除を施行すると、2日後には、約2/3が死亡した。70%肝切除に同時に脾摘を加えても、この低下した生存率を有意に改善しなかった。このことから、70%肝切除を50%に変更し、肝硬変肝切除時の脾摘の生存率、膜流動性及び細胞動態について検討した。肝硬変でも、肝切除後に膜流動性は上昇することが判明し、再生に充分対応していた。実際、細胞動態の面からも、S期細胞は、正常の半分ではあるが、24、48時間でともに6%認められ、硬変肝でも充分再生することが明らかになった。しかし、目的とした肝切除後の再生に及ぼす脾摘の効果は、生存率、膜流動性、及び細胞動態からは、明らかな変化を認めることができなかった。今後、別の示標での評価が必要と考えられた。
|