胃切除後遠隔時における骨代謝異常の実態を明らかにするため、従来より行ってきた胃切除後症例に対する調査を継続するとともに、胃切除後骨代謝異常の発症に関し、とくに骨量動態の面から胃切除前後の経時的観察を行っている。 1.胃切除後遠隔時の患者の病態、生活状態に関する調査 胃切除後患者の過半数に骨萎縮が認められた。この背景因子を調査した結果、骨カルシウム代謝に関与する副甲状腺、腎などの機能障害、糖尿病などの代謝異常との関わりはなかった。骨萎縮例の中に、貧血や栄養障害など、他の胃切除後障害をも伴った症例が見い出され、骨障害発症の基盤には消化吸収障害をはじめとする栄養障害との関係が推察された。今後この方面の検索を行い、骨代謝異常発症の要因、メカニズムの解明が必要である。 2.胃切除前後の骨量動態 胃切除後の骨代謝障害が、術後いかなる時期からおこるものか経時的に骨量計測を行って観測を続けている。現在までの検索で、術後1年以内には骨萎縮は認められず、1〜2年経過例の一部に骨萎縮傾向が若干認められている。これら異常例に血液生科学検査、副甲状腺機能検査を行ったが関連性は見い出されていない。 3.骨障害例に対する治療 活性型ビタミンDを投与し、骨量変動の面から検討を進めているが、有意義な治療効果が得られていない。骨障害の予防を含めて今後さらに十分な検討が必要である。
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