胃切除後患者の骨代謝異常(骨障害)について骨量を中心に検索し、骨障害発症の実態、障害の発現時期を検討した。また、骨障害の予防と治療に対するビタミンD投与の意義について若干の調査を行った。 1.胃切除後3年以上の長期経過例における骨量計測では、健常対照例に比べ約半数に骨量低下があり、ことに胃全摘例で高頻度であった。しかし、再建法別や性別差はなかった。また、胃切除後の経過期間との関係では、胃切除後長期経過例ほど骨量低下例が多かった。因みに胃切除後障害研究会の全国調査の集計成績では、50歳代、60歳代の男性に胃障害例が高頻度で、しかも障害の強い例が多かった。また、術後年数の長短と骨障害の関係では有意差はみられず、胃切除後は2〜5年と比較的早期から障害の発生することが判明した。 2.胃切除後骨障害の発生時期について胃切除前後の骨量動態を観察し、prospectiveな検討を行った。術後2年余の経時的骨量計測の結果、術後1年まではほとんど変化しなかったが、2年前後になると骨量低下がみられ、男性で56%、女性で36%に低下例が認められた。なお、胃切除前の骨量評価ですでに骨量低下のあったものが29%に認められたが、これら骨量低下例と正常例における術後骨量変化に明らかな差はなかった。術後骨量低下例の背景因子では、胃切除後栄養低下との関連性がうかがわれたが、なお不明瞭であった。 3.骨障害の予防、ならびに治療におけるビタミンD投与の効果については、種々の制約から追跡可能例が限られ有意義な成果が得られなかった。 以上、胃切除後骨障害の実態はある程度明らかとなったが、予防、治療対策については今後さらに検討を重ねなければならない。
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