研究概要 |
1.食道癌切除標本の性ホルモンレセプタ-を、癌部40例(転移リンパ節も含む)、非癌部31例で測定した結果、,癌部ではアンドロゲン・レセプタ-(AR)は6例陽性,エストロゲン・レセプタ-(ER)は5例陽性。非癌部ではARは9例、ERでは8例陽性であった。 2.ヌ-ドマウス可移植食道癌は15例であった。性ホルモンレセプタ-の内訳けは,AR(+)ER(+)3例、AR(+)ER(-)1例、AR(-)ER(+)6例、AR(-)ER(-)5例であった。 3.食道癌の培養細胞系の樹立は6株であった。食道癌培養細胞の増殖におよぼす性ホルモンの影響をみるために、 (1).細胞株ES-25CおよびES-8Cを用い、DCC法にて細胞核のAR(ARn)、ER(ERn)と、細胞質のAR(ARc)、ER(ERc)を測定したところ、両株ともARn、ARcは陰性。ES-25CはERn陽性(4.0fmol/mgP、Kd0.09nM)、ERc陰性。ES-8Cはともに陰性であった。 (2).10^<-14>、10^<-12>、10^<-10>、10^<-8>Mの17β-エストラジオ-ル(E2)を両株に添加したところ、ES-25Cでは10^<-12>Mで最も増殖が抑制されたが、ES-8Cでは影響がなかった。 (3).ES-25Cに10^<12>MのE_2を添加して3、5、7日目の細胞数を計測したところ、倍加時間は対照の20時間に対して32時間と遅延した。 (4).DNA合成能をBrdU陽性細胞数にて比較したところ、10^<-12>MのE_2添加により陽性細胞数は減少した。 以上の結果より、E_2添加による食道癌増殖抑制はERを介して発現することを細胞レベルで明らかにした。
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