研究課題/領域番号 |
63570637
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研究機関 | 島根医科大学 |
研究代表者 |
田村 勝洋 島根医科大学, 医学部, 講師 (80155259)
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研究分担者 |
長見 晴彦 島根医科大学, 医学部, 医員 (50180518)
樽見 隆雄 島根医科大学, 医学部, 講師 (10135907)
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キーワード | 膵グラフト血流 / 保存時間 / プロスタグランディンI_2 / トロンボキサンA_2 / 生着率 / 血栓症 |
研究概要 |
完全にdenervateされてしまう移植膵片の血流は何らかの血管作働性物質にコントロールされていると思われるが、我々はprostaglandin(PG)のPGI_2、T_xA_2に着目した。まず、犬を用い、冷却保存下でこれらの産生動態をみると保存5時間までは活発に産生されているが7時間を過ぎるとほとんど産生されなくなった。そこで、これらPGの産生活発な保存3時間とほとんど産生されない7時間で膵自家移植を行い、移植前(移植膵片摘出前:in situ)と移植後で実際の移植膵片の組織および血管血流とPGを測定した。3時間保存群では移植後にin situに比べ、組織、血管血流は共に有意に増加した。この時、T_xA_2も増加したが、PGI_2は著明に増加していた。この群は75%が生着した。一方、24時間保存群では組織、血管血流共に有意に減少した。この時のPGI_2は変化しないが、T_xA_2は有意に増加した。そしてこの群の生着はわずかに20%であり、他は血栓で失った。以上のことから、viableな短時間膵保存グラフトではreperfision時にグラフト血管内皮から十分なPGI_2が産生され、このためグラフトの組織や血管の血流は亢進(reactive hyperemia)し、血栓の予防や高率の生着が実現できたと思われた。しかし、同時にT_xA_2も高くなっており、血栓発症の危険はあり、これに対しては何らかの対策(例えば、我々が以前より提唱している遠位脾動静脈瘻など)が必要であろう。一方、24時間保存ではグラフトのviabilityが低下しているためにその血管内皮より産生されるPGI_2は前者のようには反応性に亢進はせず、血流も増加しなかった。他方reperfusion血小板由来のT_xA_2は産生されるために一方的にT_xA_2のみがたかくなり、高率に血栓が発症したと思われた。以上、PGI_2やT_xA_2はグラフトのviabilityにより変化し、これらはまた、グラフトの生着や血栓症に密接に間連していると思われた。
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