臨床的には現在までに直腸癌症例32例に対し、術前高温・化学・照射療法を施行し、局所内には大変良い結果を得ている。治療スケジュ-ルは、術前2週間にわたり温熱療法は4回、放射線療法は合計30Gy、化学療法はHCFUの経口投与を併用し、治療終了7〜10月後に切除手術を施行するものである。温熱療法は内腔温熱治療装置(Endoradiotherm 100A)を用い、内腔電極を使用することにより、radiofrequency波で加温することより行った。1回の温熱療法は腫瘍表面温度で42〜45℃、30〜40分加温を目標としている。放射線照射は外照射で、線質はリニアック(6MV Xーray)で、1.5Gy/Fr朝・夕2回/日、週10回で総量20回30Gyにて行った。現在までに解析し得た22例について、特に組織学的にその効果をみると、50%の症例で著効が得られていた。特に全く癌細胞が消失していた例が6例みられ、今後に期待を抱かせた。また壁在リンパ節転移巣が完全に消失した例も経験しており、直腸癌切除後の局所再発防止の可能性が一段と現実的になったと考える。臨床的に大きな副作用は経験しておらず、2例に軽度の白血球減少をみたのみであり、低位前方切除施行例でも縫合不全は経験していない。以上の結果は「Dis.Colon Rectum」誌と「外科治療」誌に発表済みである。この術前治療の有効性を施行前に予想できれば、臨床的に更に一段前進した治療が行えると考えられる。そこで、生検で採取した癌細胞に対し、in vitroのクエン酸脱水素酵素抑制試験を、熱(43℃)と放射線に対し行い、実際の臨床成績との相関をみることを開始している。このpreliminary studyについては、Dis.Colon Rectum誌に投稿中である。
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