1.実験群の作製 動物に10週齢のsyrian golden hamsterを用い、発癌物質にdi-isopropanolnitrosamine(以下、DIPN)を選択した。ハムスターを3群に分け、以下の処置を行った。第1の群に単開腹術を行い、DIPN500mg/kg体重(10ml/kg、生食水溶解液)を週1回の頻度で20週間腰部皮下に投与した(単開腹DIPN群)。第2の群のハムスターを開腹し、総胆管下部を6-0catgutを用い一回結紮し、不完全胆管閉塞を行い、前者と同じ方法でDIPNを投与した(不完全胆管閉塞DIPN群)。第3の群には不完全胆管閉塞後に生理的食塩水10ml/kgが上記の群と同様な方法で20週間投与された(不完全胆管閉塞生食水群)。 2.肝臓における胆管細胞癌発生増殖所見 (1)DIPN投与開始10週以後に肝臓に乳白色結節状の腫瘍が認められた。これらは組織学的に全て胆管細胞癌であった。 (2)10、15および20週目における胆管細胞癌の発生率は単開腹DIPN群が0%、23%、35%で、不完全胆管閉塞DIPNが20%、70%、89%であり、両群間で15および20週目の発生率にそれぞれ有意差がみられた(P<0.01)。なお、生食水投与群ではいずれも0%であった。 (3)10、15および20週目における1匹当りの腫瘍発生個数は単開腹DIPN群が0、1.6±0.9(Mean±SD)、1.4±0.5個で、不完全胆管閉塞DIPN群が1.0±0、4.6±4.0、8.3±11.6個であり、両群間で15および20週目の個数にそれぞれ有意差があつた(P<0.05-0.01)。 (4)不完全胆管閉塞DIPN群の腫瘍径は、単開腹DIPN群に比し、若干大きい所見がみられたが、有意差はなかった。
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