1.実験群の作製 動物に10週齢のSyrian golden hamsterを用い、発癌物質にdiisopropanolnitrosamine(以下、DIPN)を選択した。ハムスタ-を3群に分け、以下の処置を行った。第1の群に単開腹術を行い、DIPN500mg/kg体重(10ml/kg、生食水溶解液)を週1回の頻度で20週間腰部皮下に投与した(単開腹DIPN群)。第2の群のハムスタ-を開腹し、総胆管下部を6-0catgutを用い一回結紮し、不完全胆管閉塞を行い、前者と同じ方法でDIPNを投与した(不完全胆管閉塞DIPN群)。第3の群には不完全胆管閉塞後に生理的食塩水10ml/kgが上記の群と同様な方法で20週間投与された(不完全胆管閉塞生食水群)。 2.不完全胆管閉塞に伴う胆汁酸組成の変化 高速液体クロマトグラフィ-(HPLC)を用い、各群ラットの胆管胆汁につき胆汁酸分析を行った。5、10、15、20週においては、各群とも、正常ハムスタ-に比し、一次胆汁酸、特にCA(70〜80%)の増加を示した。タウロコ-ル酸(TCA)組成比率についてみると、不完全胆管閉塞DIPN群は、単開腹DIPN群および不完全胆管閉塞生食水群に比し、10〜20週においてTCA比率の有為の高値を示した。(P<0.05-0.01)。一方、グリシンタウリン抱合化(G/T)では、不完全胆管閉塞DIPN群は、他の2群に比し、有意に低値を示し、また、不完全胆管閉塞生食水群のG/T比は単開腹DIPN群より有意に低かった(p<0.05ー0.01)。 3.不完全胆管閉塞に伴う胆道感染 各群のハムスタ-の胆管胆汁を採取し、細菌学的検索を行った。単開腹DIPN群ではいずれの週においても胆汁中に細菌が検出されなかったが、不完全胆管閉塞を伴う2群においては20〜73%の細菌検出率をみた。
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