研究概要 |
1.実験群の作製 10週齢のSyrian golden hamsterを3群に分け、以下の処置を行った。第1群に単開腹術を行い、diisopropanolnitrosamine(DIPN)500mg/kg体重(10ml/kg、生食水溶解液)を週1回の頻度で20週間腰部皮下に投与した(単開腹DIPN群)。第2群のハムスタ-には、総胆管下部を6ー0catgutを用い一回結紮による不完全胆管閉塞を作製し、前者と同じ方法でDIPNを投与した(不完全胆管閉塞DIPN群)。第3群には不完全胆管閉塞後に生理的食塩水10ml/kgを上記の群と同様の方法で20週間投与した(不完全胆管閉塞生食水群)。 2.不完全胆管閉塞に伴う肝内胆管の組織学的変化の検討 各群の肝内胆管の組織学的所見は以下の如くであった。10.15および20週目における細胆管増生発生率についてみると、単開腹DIPN群は10%,51%および42%であり、不完全胆管閉塞DIPN群は各々50%,100%および100%であった。不完全胆管閉塞生食水群は20から22%を示し、低率であった。不完全胆管閉塞DIPN群と単開腹DIPN群あるいは不完全胆管閉塞生食水群の間で、15,20週目の発生率に有意差(p<0.01)をみた。15,20週目の嚢胞状細胆管増生の発生率は、単開腹DIPN群が72%および52%で、不完全胆管閉塞DIPN群が94%および100%であり、両群間に有意差(p<0.01)をみた。不完全胆管閉塞生食水群ではその発生をみなかった。一方、goblet cell metaplasiaの発生率をみると、単開腹DIPN群は10,15,20週目に0%,26%および17%で、不完全胆管閉塞DIPN群は各々40%,80%および100%であり、両群間で15および20週目に有意差(p<0.01)があった。不完全胆管閉塞生食水群では、15週目の1例のみにその発生をみた。
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