研究概要 |
胆管細胞癌の発生因子として、胆管の狭窄や閉塞が臨床的に注目され、これらと胆管細胞癌発生との関連が推察される。そこで、胆管の不完全閉塞に伴う病態と胆管細胞癌発生増殖との関連を実験的に検討した。 10週齢で体重約100gの雄性Syrian golden hamster 246匹を用い、以下の処置を受けた2群にdiisopropanolnitrosamine(DIPN) 500mg/kg体重を週1回の頻度で20週まで皮下投与し、各群に各種の検索を行った。DIPNが投与された群は、単開腹された単開腹DIPN群と不完全胆管閉塞が作製された不完全胆管閉塞DIPN群から成り、病態の解明に不完全胆管閉塞生食水群を設定した。DIPN投与後15および20週目の肝臓における胆管細胞癌発生率は、単開腹DIPN群が23%と35%で、不完全胆管閉塞DIPN群が70%および89%であり、両群間でその発生率に有意差が認められた(p<0.01)。一方、同時期の不完全胆管閉塞DIPN群の腫瘍発生個数は単開腹DIPN群に比し多く、両群間に有意差がみられた(p<0.05,0.01)。15および20週目の肝内胆管上皮についてみると、嚢胞状を含む細肝管増生やgoblet cell metaplasiaの発生がみられ、不完全胆管閉塞DIPN群の各発生率は単開腹DIPN群に比し有意に高かった(p<0.01)。胆管胆汁中の胆汁酸組成についてみると、いずれの群も一次胆汁酸の増加を示した。不完全胆管閉塞DIPN群は、単開腹DIPN群に比し、タウロコ-ル酸組成比率が有意に高く(p<0.01)、グリシン/タウリン抱合比が有意に低かった(p<0.01)。単開腹DIPN群ではいずれの週においても胆汁中に細菌が検出されなかったが、不完全胆管閉塞DIPN群は5から20週において40〜73%の細菌検出率を示した。 以上の成績は、不完全胆管閉塞がDIPN誘発胆管細胞癌の発生増殖に促進的に働くこと、また、その際に胆汁酸組成の変化や胆汁の細菌感染などが関与していることを示唆した。
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