研究概要 |
雑種成犬を用い胸部大動脈を切除し、この欠損部を有茎広背筋々弁で作成した代用血管により置換した。無〓術野および汚染術野において代用血管の生着状態、血管開存率、長期経過による動脈瘤化の有無を検討した。 (対象および方法)実験(1) A群(3頭)では代用血管を広背筋々線維に直角になるように、B群(8頭)では代用血管の軸が筋線維の方向になるよう作成し、これら代用血管を胸部大動脈切除後の欠損部に間置して大動脈を再建した。 実験(2) 実験(1)においてB群が良好な結果であったため、汚染術野下の実験はB群の方法により大動脈再建を行った。C群(3頭)ではE、coli 1〜3×10^5個、D群では結腸内容300〜500mgを生食20ml中に混じ、代用血管部に散布した後、臨床手術に準じ生食1000mlにて洗浄し、閉胸した。 (結果) 実験(1) 血管開存率はA群が66.7%、B群が100%でB群が良好であった。血管開存例ではA,B両群とも血管内膜の再生状態は良好であった。合併症はA群では筋弁縫合部あるいは筋弁の破裂が各1例、血栓が1例にみられたが、B群に破裂例はなく4例が長期生存した。最長3年間の経過観察中に筋弁部の動脈瘤化は認めなかった。 実験(2) C群およびD群の各1例が術後10日以内に死亡(原因不明)し、4例が耐術した。生存例では内膜の再生状態や吻合部の創傷治癒の状態は無〓術野の場合と大差は認めなかった。 (まとめ)(1)骨格筋の有茎筋弁が大動脈圧に耐え得ることが判明した。(2)比較的長期間の観察で、筋弁の動脈瘤化は認めなかった。(3) 汚染手術に於いても利用可能な代用血管としての可能性が示唆された。
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