我々は虚血脳局所における脳血流の変化が神経伝達物質代謝に及ぼす影響を高速液体クロマトフィー、インビボボルタメトリーを用いて測定したきた。その過程でインビボボルタメトリーにて生体脳局所の酸素濃度が測定可能なことが示唆された。この方法を手技的に確立し、その可能性と限界を探るため我々は以下のような基礎実験を行ない満足すべき結果を得た。 1)恒温槽で37℃に保たれたPhosphate Buffered Saline(以下PBS)中において、酸素の存在によって生じる電極電流を測定可能なことを確認した。すなわち純窒素で飽和したPBSにおいて電解電流は検出されないが、酸素濃度の上昇とほぼ直線的に相関して電解電流が増加し、酸素飽和の状態でピークに達することがわかった。 2)PBS中において電極への印加電位と電解電流の関係を調べた。すなわち印加電位0〜-700mVの範囲で電解電流は指数関数的に上昇することが認められた。つまり印加電位が高いほど感度も高くなる。しかし電極の安定性の点で-400mV付近が適当であることもわかった。 3)PBS中において温度と電解電流の関係を調べた。すなわち15〜50℃の範囲で電解電流は直線に近い指数関数曲線を描いて上昇することが認められた。生理的変動の範囲内では直線的と考えてよい。 4)PBS中においてpHと電解電流の関係を調べた。pH5.79〜7.70の範囲内ではpHの値と電解電流の値はほぼ直線的に負の相関を示し、pH7.70〜9.05の範囲では電解電流は略一定であった。 以上の基礎データをもとに、ラット線状体に置いた電極を用いて組織酸素濃度の測定を行なっており良好な結果が得られつつある。
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