虚血脳局所における脳血流の変化が神経伝達物質代謝に及ぼす影響を調べるうえで、組織内酸素およびモノアミンを同一部位で同時に測定することの意義は大きい。インビボボルタメトリ-の技術を用いてこれを実現する可能性がこれまでの実験で示された。我々はこの方法を手技的に確立するために種々の基礎実験を行うとともに、それと平行してラット脳内においた微小電極を用して予備的な実験を行い、以下のような結果を得た。 1.線状体に電極を設置したラットを空気中に置いた場合、組織内酸素の存在によって生じる電解電流はほぼ一定に保たれ、安定であることを確認した。 2.ラットを窒息させて酸素の供給を断った場合、4〜6秒のタイムラグ出電解電流が急速に低下し始め、呼吸再開後4〜6秒で電解電流が回復し始めることを確認した。 3.純酸素中にラットを置いた場合電解電流が急激に上昇、40〜50秒でピ-クに達し、その後やや減少して、2〜3分で安定した。高濃度酸素による血管攣縮を反映した現象と推定したが、今後の検討が必要と思われる。 4.純窒素中にラットを置いた場合電解電流が急激に低下、空気中に戻すことにより回復することを確認した。 5.電極を設置して11カ月経過したラットで組織内酸素の計画が可能であることを確認した。以上の結果をふまえ、今後以下の如き実験を予定している。 1.ラット虚血脳での組織内酸素の計測。各種薬物の負荷。 2.種々の生理的刺激に対する脳内各部の酸素の変動を計測。 3.モノアミンと酸素の同時計測。
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