研究概要 |
今回われわれは視床網様核の尾端に位置してこの核と解剖生理学的な関係で注目されているForel-H野を研究対象とした。すなわちForel-Hの神経線維連絡をHRPを用いた逆行性標識により調べた。成熟ネコ4匹のForel-H野に定位的に電気泳動法を用いてHRPを注入し、以下の部位に標識を認めた。 前S状回、後S状回、視索上核、視床下部前野、視床下部背側野、中脳網様体、吻側橋網様核、橋中心灰白質、下前庭核そして疑核に細胞が認められた。また下視床脚に標識神経線維を認めた。すなわち大脳皮質運動知覚野、視床下部、網様体賦活系と解剖学的連絡を有する。 このうち運動野(分野4)および運動前野(分野6)である前S状回、一次体知覚野である後S状回に着目し、1匹のネコで逆行性標識細胞の局在を調べた。矢状断で観察し以下の結果を得た。1.標識細胞は総計105個でうちわけは前S状回81個(77%)、後S状回24個(23%)であった。2.十字溝全長(約7.50mm)を含む注入側皮質を矢状断にて4等分し、正中から外側へ向けてA,B,C,Dとすると標識細胞の比率はそれぞれA47.6%、B39.0%、C6.7%、D6.7%と内側部に比較的限局していた。3.同様の矢状断にて非注入側皮質には標識細胞は認められなかった。4.細胞は主に第V層に標識された。5.皮質を表面皮質と溝皮質に分けると前S状回に標識された81個の細胞は表面皮質11個、溝皮質70個、後S状回の24個は表面皮質1個、溝皮質23個であり、したがって総計105個中12個(11%)のみが表面皮質で93個(89%)は溝皮質すなわち内部に分布していた。 錐体路の起始細胞は分野4とその背側に続く一次体知覚野に多く、分野4では十字溝の内部に最も多いといわれる。われわれの得た結果との類似は興味深い。
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