1.脚延長肢における筋節長順応の研究 昭和63年度に研究開発した、生体内での筋節長測定法、およびこれを利用して観察した伸長位保持筋における筋節長の経日的短縮をさらに発展させ、自由運動を許した肢において、筋節がいかに筋長に順応するかを観察した。成熟白色家兎の小指指伸筋を用い、一側の前腕骨骨幹部を骨切りして創外固定器(Orthofix M-100)を尺骨に装着、前腕を3.5mm延長した。前肢の各関節の自動運動は束縛しなかった。術直後および2、5、9、14日後に創外固定器を装着したまま、全身麻酔下に指伸筋を露出し、ヘリウム-ネオンレ-ザ-光を筋辺縁に入射して得られた回折縞から筋節長を算出した。この結果、延長前の筋節長平均値が2.9μmであったのに対し、延長直後は3.4μmum、2日後3.3μm、5日後3.1μm、9日後2.9μm、14日後2.9μmであった。すなわち脚延長操作によってひきのばされた筋節は経日的に短縮し9日後にほぼ伸長前の長さにもどっていた。関節の自由運動を許した場合でも、伸長位を保持した時と同様に、筋節長が新しい筋長に順応することが明らかとなった。 2.伸長位固定筋の電顕的形態学 8週齢マウスの長趾伸筋を用いた。一側後肢を趾および足関節最大屈曲位にギプス固定し、0、7、14日間後に灌流固定の後、長趾伸筋を摘出し、筋腹および近位、遠位の筋腱移行部より電顕用標本を採取、オスミウム後固定を行なって透過型電子顕微鏡で観察した。少数例のため結論を出せない点があるが、従来言われていた筋腱移行部での筋節の新生のほか、筋腹でも筋節の配列の変化などがみられ、筋伸長の影響は筋の全長に及んでいると考えられた。
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