研究課題/領域番号 |
63570698
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
塩川 靖夫 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (80115708)
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研究分担者 |
佐藤 昌良 三重大学, 医学部, 助手 (00215849)
四方谷 弘司 三重大学, 医学部, 助手 (30220776)
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キーワード | FatーEmbolism(脂肪塞栓) / 脂肪酸分画 |
研究概要 |
脂肪塞栓症候群における脂肪栓子の由来並びに肺病変の機序の解明のため犬を使ってその骨髄脂肪、皮下脂肪、血清の脂肪酸分画を測定し、次に大腿骨骨折を生じさせた群(骨折群)と骨折のない群(非骨折群)に分けその肺組織の脂肪酸分画及び組織所見を調べると共に骨折群においては経時的に血清脂肪酸分画を測定し、脂肪塞栓症候群の診断のため胸部レントゲン検査とPaO_2、Hbを調べた。材料は体重10ー15kgの雑種成犬を用い、骨髄、皮下脂肪は組織をエムルジョン化しFolchの方法で脂肪酸を回収しガスクロマトグラフィ-で分画を測定した。血清は採血後遠心分離し血清を取り出し、ガスクロマトグラフィ-で脂肪酸を測定した。肺組織の脂肪酸分画は骨髄、皮下組織と同様に測定した。結果として骨髄、皮下脂肪の脂肪酸分画は類似しておりC18:1、C18:2、C16:0、C16:1、C18:0が大部分を占めていた。肺の脂肪酸分画はC16:0、C18:1、C18:0、C18:2、C20:4、C16:1が大部分を占めていたが、骨折群は非骨折群に比べC18:1、C18:2、C20:1が多く(P<0.05)、C20:4が少なかった(P<0.5)。骨折群の経時的血清脂肪酸分画がC18:2のみが増加していた(P<0.05)。胸部レントゲン検査では異常はみられなかったが、PaO_2とHbは有意の減少を示し、臨床的に脂肪塞栓症候群の疑症と判定された。肺の組織所見は脂肪栓子が肺胞野の毛細血管や気管支壁の細動脈に広範に認められ、栓子の高度な肺胞野では肺胞surfactantが障害された所見である巣状の肺胞虚脱や毛細血管破綻による肺出血や気管支内出血を生じていた。以上の結果から骨折群のC18:2の血清と肺での増加は生体の脂肪塞栓症候群に対する予防的反応と推測し、肺でのC18:1、C20:1の増加は脂肪栓子の一部は骨髄、皮下脂肪から由来すると考えられた。C29:4の減少は脂肪栓子による肺虚血が生じ血管内皮の膜結合性phospholipaseが活性化されたsurfactantの障害が生じる主成分のlecithinが分解されC20:4が減少したと結論した。
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