研究概要 |
昭和63年度における本研究の成果は下記の通りである。 1.当大学病院及び関連施設における骨軟部腫瘍症例より、DNA約70検体、RNA約30検体、腫瘍細胞約10検体、ヌードマウス移植約5検体を得た。 2.上記の検体を用いて、まずRb(Retinobastoma)遺伝子(Dr.Friend,S.H.より入手)の異常の有無を検討した。その結果、骨肉腫23例中DNAレベルでは8例、35%に構造異常を認めた。うち5例はhomozygous、3例はheterozygousなdeletionであった。また8例中7例は47kb Hind III断片の欠失であり、同部位がhot spotであると考えられた。異常の見られなかった残りの15例のうち、5例ではRNAレベルで正常なTrans criptionが見られなかった。以上の結果より、骨肉腫においては、Rb遺伝子の異常が発症に強く関与していることが実証された。 3.骨肉腫におけるRb遺伝子の異常と、臨床経過との相関に関しては、年令、性、悪性度等で特に明らかな相関は見られなかった。より多くの症例で検討する必要があると考えられた。 4.骨肉腫以外の骨軟部腫瘍に関しては、MFHの3例中2例において同遺伝子の構造異常が見られた。このことは、MHFの発症にも、Rb遺伝子が関与している可能性が高いことを示している。 5.以上の結果は、第2回日本整形外科基礎学会及び第47回日本癌学会にて発表し、現在Cinical Orthopaedics and Related Researchに投稿中である。 6.今後の研究の展開に関しては、まず、より症例数を増やすこと、特にRNAレベルの解析を進めることが必要である。またその上で、より詳細に転移や化学療法と臨床経過との相関を検討する必要がある。さらに現在、他の癌関連遺伝子との関与を検索中であり、複雑ではあるが、より具体的な発癌機構の解明を行う予定である。
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