研究概要 |
平成元年度における本研究の成果は下記の通りである。 1.当大学病院及び関連施設における骨軟部腫瘍症例により、DNA約100検体、RNA約50検体、腫瘍細胞10検体、ヌ-ドハウス移植5検体を得た。 2.上記の検体を用いて、昨年にひき続き、Rb(Retinoblostonia)遺伝子の異常の有無を検索した。昨年度に確認されたものに、さらにDNAレベルで1検体、RNAレベルで3検体に異常が同定できた。骨肉腫における、この遺伝子の異常の関与を追確認することができた。 3.さらに、骨肉腫に関与すると考えられる癌遺伝子のひとつとして、マウス骨肉腫由来の癌遺伝子であるCーfosに注目し、これをprobeとして、計23例の骨軟部悪性腫瘍において、その発現をRNAレベルで解析した。その結果、骨肉腫11例中全例、他の骨腫瘍8例中7例でfosの発現がみられたが、軟部肉腫4例及び正常骨髄組織では、longerexposureにても発現はみられなかった。骨腫瘍のうち、発現が認められなかったのは、BenignGCTのみであり、そのX線像はosteolyticであった。また、fosの発現量をdensitormeterを用いて計測した結果骨肉腫、軟骨肉腫では、他の腫瘍に比し、より強い傾向がみられ、悪性腫瘍において高い発現がみられることが明らかとなった。 4.以上の結果は、第3回日本整形外科基礎学会及び第48回日本癌学会にて発表した。また、昨年の結果と合わせて、第36回Annual Meeting Orthopoedic Research Society in USAにて発表した。 5.今後はさらにP53及びCーmyc,mdr,組織特異蛋白等について解析を進め、より具体的な発症因子の解明と臨床的応用を試みたい。
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