高血圧自然発症ラット(SHR)の大腿骨々頭には、小児のペルテス病に類似した無腐性壊死が高頻度に発生する。昭和63年度の研究で無腐性壊死の出現時期やその修復過程を検索した結果、生後9週から15週の間の成長期に発症し、その後すみやかに自然治癒する事が判明した。 本年度の研究では、この無腐性壊死の発生に関して、大腿骨々頭へ至る栄養血管がどの部位で閉塞する事によって起きるかを検索した。 実際には生後9週から15週の雄SHR80匹、160骨頭のうち修復反応のない新鮮な無腐性壊死を示す14骨頭と、対照として正常骨化を示す15骨頭を用いた。大腿骨々頭の栄養に関与していると思われる血管を追跡するため、大腿骨近位部の前額面連続切片を作製後HE染色を行い、組織学的に観察した。 その結果、以下の知見が得られた。 1.正常骨化を示すものでは、骨頭内へ至る血管はほとんど骨頭外側の関節軟骨と成長軟骨帯の移行部を貫いて侵入していた。 2.これに対して、新鮮な無腐性壊死を示すものでは、いずれも骨頭外側の軟骨直前までしか血管は追跡出来ず、それより末稍の軟骨貫通部附近には、瘢痕形成や肉芽形成が認められた。 以上より、SHRにおける大腿骨々頭壊死では、骨外血行路は開存している事、それより末稍の骨頭軟骨層の血管貫通部には、瘢痕形成や肉芽形成などが認められた事から、血管が骨頭外側から軟骨層内へ侵入した部位で閉塞する事が示唆された。
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