研究概要 |
前年度ではin vivoの実験で大量のモルフィン、フェンタニル投与で血漿ANPの著しい増加がみられた。この増加はナロキソンによって完全に抑止された。しかし他の内因性オピオイドのβ-エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィンAでは血漿ANPの増加はなかった。更にモルフィン、フェンタニル投与により血漿カテコルアミンの著増があったことより、内因性カテコルアミンがANP分泌増加に強く関与していると推察された。そこで今年度は同じく各種オピオイドおよび、カテコルアミンの影響を、ラット心房筋分離細胞培養法にて、心房細胞よりのANP分泌に対する直接影響を検討した。-結果-モルフィン(10μg)、エンケファリン(5μg)、フェンタニル(1μg)、βーエンドルフィン(10μg)ナロキソン(5μg)/試験管では培養液中へのANPの有意な分泌増加はなかった。しかしダイノルフィンA(DyA:5μg)、エピネフリン(E:50μg)、ノルエピネフリン(NE:50μg)、ド-パミン(DA:50μg)では各2.0、1.2、1.4、2.0倍の増加があった。特にDyAでは(1.25-5.0μg)で用量依存性の増加がみられた。更に注目すべきは、E50μg+DyA5μg、NE50μg+DyA5μg、DA50μg+DyA5μgでは各2.3、5.9、24.0倍とANP分泌増加に対して相乗効果があった。特にDAとDyAの併用投与時の分泌亢進が著しかった。この亢進作用はオピエ-ト拮抗薬のナロキソンでは抑止できなかった。また交感神経遮断薬のα、βーブロッカ-(50μg)もE、NE、DAおよびDyAとの併用で有意にANP分泌を亢進させた。その促進効果は有意にβ-ブロッカ-のほうが強かった。 以上の結果より、モルフィン投与時の血漿ANPの増加はモルフィン自体の心房筋細胞に対する直接作用より内因性カテコルアミンの増加が大きく関与していることがin vivo,in vitoroの両面より確認された。-結論-1.カテコイアミンはラット心房分離細胞よりのANP分泌をぞかさせる。その強さはDA>NE>Eであった。2.ダイノルフィンAは用量依存性にANPを分泌亢進させた。3.DyAとカテコルアミンの併用ではさらにANP分泌を亢進させた。4.特にDyAとDAの併用では24倍ものANP増加がみられた。5.α-、β-ブロッカ-にもANP分泌促進効果がみられた。その強さはβ->α-であった。
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