研究課題/領域番号 |
63570721
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研究機関 | 富山医科薬科大学 |
研究代表者 |
久世 照五 富山医科薬科大学, 医学部, 助教授 (20019938)
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研究分担者 |
宮原 龍郎 富山医科薬科大学, 薬学部, 助教授 (10019119)
伊藤 祐輔 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (70018307)
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キーワード | 輸液剤 / 乳酸リンゲル液 / 酢酸リンゲル液 / 乳酸ナトリウム / 酢酸ナトリウム / 酸塩基平衡 / 代謝 / 放射性同位元素 |
研究概要 |
手術・麻酔中の輸液剤としては乳酸リンゲル液が多用されるが、近年、酢酸リンゲル液が注目されてきている。その理由はそれら輸液剤中の有機酸塩である乳酸塩と酢酸塩は代謝されて重炭酸イオンを生じるが、乳酸は主として肝臓で代謝されるのに対し、酢酸は全身の組織で代謝されて代謝速度が乳酸よりも早いとの考えからである。そこで、我々は夫々のリンゲル液投与後の体液諸因子に及ぼす影響を臨床例で、また乳酸と酢酸の代謝を^<14>Cの放射性同位元素を用いた動物実験で比較検討した。 1.全身麻酔下、鼓室形成術中の症例に、乳酸(ラセミ体)リンゲル液あるいは酢酸リンゲル液を、先ず最初の30分間で500mlを、その後3時間10分間にわたり5ml/kg/hrの速度で投与し、比較検討した。 (1)通常の濃度の28mEq/Lの乳酸あるいは酢酸ナトリウムを含んだ夫々のリンゲル液の比較では、両者間に全く差が認められなかった。 (2)通常の3倍の濃度の84mEq/Lを含んだ夫々のリンゲル液の投与では、酢酸リンゲル液の開始より30分の時点でのみ、血液ガス分析でのBase Excessの値が乳酸リンゲル液群よりも高値を示した。しかし他の体液諸因子、他の測定時点では両者間に差がなかった。このことは短時間に大量の有機塩が投与された場合にのみ、酢酸ナトリウムの方がより早く代謝されるが、通常の使用量では差が認められないといえた。 2.非絶食ラットに^<14>CでラベルしたL-乳酸あるいは酢酸ナトリウムを尾静脈内にワンショットで投与した。呼気炭酸ガスへの^<14>Cの排出率、尿および腸管内・糞便への^<14>C排泄率、また体内の主要組織ならびに臓器への^<14>Cの分布については、両者間に大きな違いはなかった。しかし、肝ホモジネ-ト分画操作による各画分への^<14>Cの取込を検討した結果、乳酸は解糖系と、酢酸は脂質代謝との関連が強いことが明らかにされた。
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