本研究では各種臓器の摘出血管を用い、血管収縮性に及ぼす麻酔薬作用の臓器特異性とその機構を検討した。 (1)バルビツレ-トの血管収縮作用 チオバルビツレ-トのサイアミラ-ル及びサイオペンタ-ル、オキシバルビツレ-トのセコバルビタ-ルとペントバルビタ-ルの直接血管収縮作用について検討した。その結果、(1)チオバルビツレ-トは血管収縮作用を有するが、オキシバルビツレ-トにはその作用はないこと、(2)チオバルビツレ-トの血管収縮作用は脳以外(腸間膜、腎、冠、股)の血管に較べ、脳動脈において有意に大であること、(3)チオバルビツレ-ト脳動脈収縮作用には細胞外C_a^<++>流入が関与することが明かとなった。バルビツレ-トの脳血管流減少作用が、脳代謝抑制の二次的結果だけでなく、脳血管直接収縮作用が関与していることを支持する結果である。 (2)バルビツレ-トの血管弛緩作用 KCL或はプロスタグランヂンF_2α(PGF_2α)で収縮させた脳及び腸間膜動脈において、チオバルビツレ-ト(10^<-5>-10^<-3>M)は低濃度で収縮反応、高濃度で弛緩反応の二相性反応を示した。オキシバルビツレ-トは弛緩反応のみ示した。フェニレフリンで収縮させた血管においても同様の反応が観察された。 (3)揮発性麻酔薬ハロセンとイソフルレンの冠動脈弛緩作用。 中枢部の太い冠動脈と末梢部の細い冠動脈におけるハロセンとイソフルレンの弛緩作用を比較した。その結果、ハロセンは中枢部の太い冠動脈を、イソフルレンは逆に末梢部の細い冠動脈をより強く弛緩させた。 以上の結果は、麻酔薬の血管作用に臓器特異性があること、又同一臓器血管に対しては麻酔薬の構造特異性があることが明らかにされた。
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