ラット主要組織適合抗原であるRTIを指標として、ラット腎移植を行った。RTI完全不適合であるDonorがTO、LEW、recipientがWKAHとした腎移植では、各々14.57±7.85(n=7)、8.25±0.46(n=8)で急性拒絶された。ただしTO→WKAH腎移植で1例に200日以上の長期生着ラットを得た。 次いで同じ組み合わせのdonorがTO、recipientがWKAHで、移植1週間前にdonorであるTOの脾細胞をWKAHに静脈内投与し、腎移植を行った。2例が18日、41日で拒絶されたが、6例では192日以上の長期生着が得られ、TOで免疫したWKAHでは有意の長期生着が得られることが判明した。しかし、donorがLEWの場合には同様の処置を行っても長期生着ラットは得られず、RTI完全不適合の中にも多様性が存在することが示唆された。 拒絶現象における抗原認識過程をブロックして生着延長をもたらせようとする試みがある。そこでdonorにF344、recipientにWKAHを用い、それにdonorに対する抗Ia抗体である4B4と、recipientに対する抗Ia抗体である1E4を腎の灌流時と移植直後に静注投与した。対照群の生着日数は7.86±1.07(n=7)、4B4灌流群の生着日数は9.83±1.47(n=6)と有意に生着延長を示した。さらに4B4灌流+1E4静注群では10.40±1.95(N=5)と生着延長を示し、他に2例の長期生着ラットが得られた。しかし長期生着は有意の出現率とは言えなかった。以上のように抗Iaの抗体により生着延長効果は認めたものの、移植抗原のbarrierを越えた長期生着は得られず、抗原認識課程の複雑さがうかがわれた。
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