臓器移植における拒絶現象は主要組織適合複合体により決定される。本研究では主要組織適合系の明らかな近文系ラットを用い、拒絶モデルを作成し、そのモデルから拒絶現象の解析と特異的免疫抑制法の確立を検討した。 1.拒絶モデルの作成 recipientをWKAH(RT1^k)、donerをTO(RT1^u)、LEW(RT1^l)、F344(RT1^<lv>)とする腎移植ではそれぞれ10.17±1.14(n=6)、8.25±0.46(n=8)、7.86±1.07(n=7)で急性拒絶される。 2.生着延長の試み (1)抗Ia抗体の使用:donerをF344、recipientをWKAとした腎移植においてdoner腎をdoner抗Iaモノクロ-ナル抗体4B4で濫流すると、9.83±1.47日で急性拒絶されるが有意の生着延長を示す。更にdoner腎を4B4で濫流し、抗recipient Ia抗体(1E4)をrecipientへ静注投与すると、10.4±1.95の生着延長を示した。 (2)脾細胞前投与:移植1週前にdoner脾細胞投与し前〓作することによりTO→WKAHへの腎移植では著明な生着延長が得られた。 (3)Deoxyspergualinの短期投与:非特異的免疫抑制度剤であるdeoxyspergualinを腎移植後4日目より4日間の短期投与により、TO→WKAHの腎移植で著明な生着延長効果が得られた。 3.生着延長機序の解明 脾細胞前投与ラットの血清、細胞成分をリンパ球混合培養に添加し、その抑制活性を検討した。早期には血清中に非特異的抑制因子が出現し、移植後4週頃には特異的にMLRを抑制する細胞性因子が誘導されており、これは抑制性T細胞の可能性が示唆された。また、deoxysprgualin投与では移植後2週目よりdoner特異的な免疫学的寛容状態にあることが、皮膚移植により証明された。
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