前立腺癌のホルモン抵抗性の有無は癌化する前立腺上皮細胞のheterogeneityに起因するのではないかとの予測のもとに、今年度は主として前立腺肥大症(BPH)の上皮細胞を免疫源としてモノクロナル抗体(MoAb)の作製を行なった。免疫されたBalb/cマウス脾細細胞とマウス骨髄腫細胞653をPEG1500で細胞融合した。スクリ-ニングはBPHの新鮮未固定凍結切片との反応性を間接蛍光抗体法で調べることにより行なった。今年度の検討では前立腺上皮に特異的に反応するMoAbは得られなかったが、四種類の興味あるMoAbを得た。4D2、10D3、6D2、4A2の四種類であり、4D2は前立腺の導管の上皮に反応、10D3は前立腺上皮の全て前立腺分泌物に反応、6D2は前立腺上皮の全てに反応するが前立腺分泌物には反応しない、そして4A2は前立腺を含む外分泌腺上皮に反応するMoAbであった。免疫組織学的検討から、これらのMoAbは前立腺のheterogenetyを示すものであった。以上の検討から前立腺上皮細胞の抗原性は多岐にわたっているものであることが判明した。 次にこれらのMoAbの前立腺癌に対する反応性について検討した。今回得られたMoAbは全てパラフィン切片では反応しないことから、新鮮未固定凍結切片を用いての検討となり、検討した症例数は少なかった。よって結論を出すに至ってはいないが、現在までの検討の結果からは前立腺上皮細胞のheterogeneityと前立腺癌のホルモン抵抗性との間に関連性はないと考えている。
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