前年度の臨床応用の反省から、本年度は動物実験を行い臨床応用時の欠点の改良に努めた。用いた犬は中型の雌犬5匹である。犬の第一または第二仙骨神経前根の両側に(多くは第一仙骨神経)特殊なステンレス電極を留置し、電気刺激を加えて排尿を起こす実験を行った。30c/s、0.1m/s、5-15Vの条件で刺激を加えたところ、排尿筋の収縮が起り尿の流出を認めた。しかし、電気刺激時には尿道括約筋の収縮も同時に起り、平均80%の残尿を認めた。このことから、排尿効率は十分とは言えず、臨床応用する時には、経尿道的外括約筋切除術を用いて尿道外括約筋の一部を切断する処置が必要となることがわかった。 我々の用いている留置電極は、ステンレスの細い電極を数十本より合わせた特殊な電極であり、半田の開発した電極を改良した。留置手術後1週間は電気刺激によく反応し、最長で1ケ月間の刺激に反応した。留置電極とししては今迄用いた電極の中で、卓越して優秀な電極であった。 臨床応用では、経皮的な仙骨孔からの第2、第3、第4仙骨神経への電極針の刺入が極めて困難であった。このため動物実験(上述した犬)で経皮的な仙骨孔よりの刺入り実験を行ったが有効な膀胱の収縮を得られなかった。このため観血的に仙骨孔を露出て張り電極を刺入し、刺激部位を変えながら電気刺激を加えたが、解剖学的に計算された仙骨神経走刺激の場合は、針電極が目的とする神経の極く近く迄到達していても、椎弓切除を行い特殊針電極を留置した。以前に用いた神経を包み込む電極とは異なり、操作が簡単で椎弓切除の範囲も小さくて済み脊髄留置電極として有用であった。
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