研究概要 |
前立腺癌患者13例について、ホルモン療法の前後でのbromodeoxyuridine(BrdU)の摂取率を測定した。BrdUの標識には、今回我々が独自に開発したin vitroでの標識用の器具を利用した。この方法は簡便でかつ大きな装置がいらないため一般診療所でも簡単にBrdU標識が可能である。その結果、,前立腺癌の組織学的悪性度とBrdU摂取率の間には殆ど相関は認められなっかたが、多くの患者でBrdU摂取率はホルモン療法の後に著明に低下した。さらに、ホルモン療法の後では、多くの症例でBrdU摂取を認める細胞は殆ど消失したが、4症例では治療後も小数ながら標識細胞を観察した。これらの症例のうち、3例ではホルモン療法によっても病勢の進行をみるか、早期に病巣の再燃を経験した。この事から我々の予想どおり、ホルモン療法の前後でのBrdU摂取率の測定は前立腺癌における治療の結果を予測するのに有用と思われる。この結果は現在、癌学会誌に投稿中である。 今後の研究の方向として, (1)さらに症例を増やし、統計的検討を加える。 (2)他の腫瘍においても、治療前後のBrdU摂取率の変化が治療結果を反映するかを検討する。特に、膀胱腫瘍患者の動脈療法の前後におけるBrdU摂取率の変化は、臨床的な有用性が高いと考えられる。今後は,この点についてさらに研究を発展させたいと考えている。
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