研究概要 |
まず、ヒト腎癌患者16例より得られた腫瘍組織と正常腎組織より、m-RNAを抽出し、Northern blotting法にて、12種類の各種ガン遺伝子の発現を検討した。 その結果、腎癌組織にのみc-myc(75%)とc-erbB1(47%)遺伝子が著明に過剰発現する場合が多いことが明らかになった。その他c-fos,H-ras,myb等の遺伝子の過剰発現が小数例に認められた。また、c-erbB1遺伝子の過剰発現が認められた症例のほとんどがc-myc遺伝子の過剰発現も同時に認められ、腎癌におけるこれら2つの遺伝子の相互の関りが示唆された。これらの成果は、Cancer Res.の12月号(1988年)に発表した。 次に、c-myc遺伝子が過剰に発現するヒト腎癌細胞を用いて、その発現量を調節する可能性のある薬剤として、各種サイトカインを検討した所、TNF(腫瘍壊死因子とインターフェロンγの組み合わせがc-myc発現量を著明に減少させ、そして、その後に細胞増殖の抑制をもたらすことが明らかとなった。この組み合わせにより、癌遺伝子の発現の抑制を介する一つの癌治療が開発できる可能性が示唆された。(日本癌学会総会、1988年 発表) 今後、これらの結果をふまえ、さらに検討をつづけ、腎癌におけるがん遺伝子発現の特性を積極的に癌治療に結びつける研究を行う予定である。
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