TNF-αのN末端分子構造がより塩基性にとんだ構造となっている新規腫瘍壊死因子(TNF-S)は、癌細胞に対する感受性の面ならびにTNF-αに比し毒性が低い点で、TNF-αとはやや性格が異なる。本研究ではTNF-Sの人尿路性器系腫瘍に対する抗腫瘍効果を、in vitro、in vivoの両面より検討した。in vitroの検索では、4種類の膀胱癌細胞株と1種類の前立腺癌細胞を用いたが、これらの細胞はTNF-αに対して抵抗性を示した。一方、TNF-Sの一種であるrTNF-S_<cw1>はTNF-αに比し10倍から100倍の細胞障害性を示したが、本分子は産生性が低く、生体内投与は不可能であった。他のTNF-SであるrTNF-S_<cw2>では、TNF-αに比し軽度の細胞障害性の増加を示すものの、長時間かつ高濃度の接触を要した。また同TNF-Sと4種類の制がん剤とを併用したが、低濃度から中程度のTNF-S濃度では、軽度の細胞障害性が認められたのみであった。TNF-Sと温熱付加によっても細胞障害性の増強または細胞代謝回転への影響は認められなかった。 一方ヌ-ドマウス移植系を用いた、in vivoの検索では、膀胱癌移植腫瘍の増殖抑制がrTNF-S_<am2>単独投与で認められた。本TNF-Sは産生性も高く毒性もTNF-αに比し10倍軽減されたものである。同TNF-SとcDDPの併用投与では、8匹中3匹に完全腫瘍消退が認められ、増殖抑制の程度もcDDP単独群よりも有意に強いものであった。他のBRM剤との併用では、TNF-Sの亜種であるThymosinβ_4/TNF-SとLentinanとの併用で、前立腺癌移植系の明らかな増殖抑制が認められた。他の薬剤との併用を念頭に置けば、TNF-Sの人尿路性器系癌への有用性は存在するものと思われた。
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