研究概要 |
初年度,ラットによる実験的膀胱腫瘍に対するビタミンEの抗腫瘍効果を検討し,ビタミンE欠乏群に腫瘍発生傾向の強いことを認めたが,コントロ-ル群とビタミンE過剰群(ビタミンE60mg/100g食)との間に有意差は得られなかった。その理由として,文献考察上,ビタミンEの至適濃度,それによる免疫能の関与などが考えられた。そこで,本年度,ビタミンE過剰群に,前回の血中濃度を参考として,ビタミンE40mg/100g食群を加え,4群間で同様の実験を行い,免疫能の指標として,血中リンパ球数,リンパ球のsubsetのモノクロ-ナル抗体であるCD_4,CD_8比(CD_4/CD_8)を検討した。結果は前年度同様,腫瘍発生状態に各群間で有意差はみられなかったが,腫瘍数はビタミンE欠乏群が最も多い傾向を示し,過形成の上皮細胞層の厚さ,乳頭状腫瘍径において,ビタミンE欠乏群とビタミンE60mg/100g食群との間に有意差(P<0.05)がみられ,欠乏群の細胞増殖傾向が強かった。腫瘍異型度は欠乏群が最も高く,逆に,CD_4/CD_8は最低値を示し,異型度とCD_4/CD_8とは負の相関関係を示した(γ=-0.9)。また,血中ビタミンE濃度は欠乏群,コントロ-ル群,40mg群,60mg群の順に増加し,試験食を順調に摂取したことが示された。以上の結果から,ビタミンEは濃度依存性に腫瘍細胞の抗原性増強に関与する可能性が示唆された。しかしながら,ビタミンEの抗腫瘍効果は,なお,明らかでなく,その理由として,癌原物質(BBN)の過量,ビタミンEの至適濃度,動物種差などが考えられ,さらに綿密なスケジュ-ルによる検討がのぞまれる。
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