研究課題
昭和63年度中に腎移植患者3例につき、CD4、CD8、leu7、okt9、などのリンパ球サブセットおよびクレアチニン、BUN、WBC、尿中NAG、B_2MG、尿量を測定した。これを赤池が開発し、和田による臨床データ解析用に修正した自己回帰モデルを用いて検討した。症例1では低周波領域において、CD8の動きの60%前後がCD4によって制限されるが、他の変数には影響を受けない。症例2では、CD4からの影響は少ないが、そのかわりに尿中のNAGによっても影響をさらに僅かではあるが、NK細胞からの影響も受けていることが判明した。症例3では、CD4からの影響が強く、比較的高周波領域でかなりの寄与がみられた。CD4の変動についての解析では、全体的に他の変数からの寄与が少ない傾向にあるが、症例2では、CD8の場合と同様にNAGからの影響が比較的大きい。NK細胞の変動について見ると、症例1では、他の変数からの寄与が少なく、症例2ではCD8から、症例3ではCD4からの寄与が比較的強い。NAGの変動に関する解析結果は、症例1では他の変数からの影響が少なく、症例2ではCD4、8からの寄与が多少見られる。例3ではCD4からの影響が低周波から高周波領域にわたっている。これらの所見から腎移植患者の免疫ネットワークは、各患者でかなり共通する部分がある。尿中のNAGを腎障害の指標のひとつとすると、これによって免疫ネットワークは影響を受けることは確かである。尿中のNAGや血清クレアチニンの変動はCD4、CD8、NK細胞などによってかなり影響を受けていることが判明した。このことについては、第21回日本移植学会総会(福岡)にて発表した。
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