研究概要 |
ヒト睾丸胚細胞腫瘍株に対する抗癌剤の分化誘導作用の検討を行った。 1.in vitro実験:ヒト睾丸絨毛上皮癌細胞株JHTKー1を各種抗癌剤の各濃度で48時間処理し、細胞数を計測するとともに、培地中のHCG濃度を測定し、細胞1個当たりHCG分泌量(HCG mIU/cell/48hr)を算出した。このHCGの単位分泌量の増加を、絨毛癌細胞が合胞体細胞に分化する指標として抗癌剤の分化誘導能を検討した。対象とした抗癌剤は、cisplatin(CDDP),vinblastine(VLB),bleomycin(BLM),actinomycin D(ACD),VPー16である。研究成績:検討した4種の抗癌剤内で、程度の差があるもののコントロ-ルと比較してHCGの分泌量の増加が認められた。すなわち、CDDP(1.0μg/ml)で2.3倍、VLB(10^<ー2>μg/ml)で3.0倍、BLM(100μg/ml)で1.2倍、ACD(1μg/ml)で3.4倍、VPー16(1μg/ml)で2.8倍であり、これらの薬剤に分化誘導効果が認められた。 2.in vivo実験:AFP産生性ヌ-ドマウス可移植性ヒト睾丸腫瘍株(JTGー1)を用いて実験を行った。ヌ-ドマウスに腫瘍移植後3週目から、PVB療法に準じて抗癌剤(CDDP 2mg/kg×5,VBL 0.1mg/kg×2)を投与した。治療開始後、血中AFP値の推移、腫瘍増殖、腫瘍内のAFP値の推移、腫瘍の組織学的変化について検討した。研究成績:治療群は、治療開始後14日目まで腫瘍の縮小傾向がみられた。血中AFP値と腫瘍内AFP値は、対照群と比べ14日目まで、約2ー4倍および40ー59倍の上昇を示した。組織学的にはreticular patternが目立つようになり、AFP陽性細胞の著明な増加がみられた。以上の成績から、PVB療法によりAFP産生細胞が増加し、血中AFP値が上昇することが示唆された。
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