最初の実験モデルとなったF344ratからLewis ratへの腎移植の結果がまとめられた。 本モデルは、移植後進行性に腎機能が悪化し機能廃絶にいたることが判明した。血清クレアチニン値は進行性に上昇し、第4週目1.3mg/dl、8週目1.5mg/dl、12週目2.6mg/dlとなった。尿中タンパク定量では、4週目80mg/day、8週目220mg/day、12週目300mg/dayと進行性の増加をみている。さらに血圧の変動をみると、移植4週目140mmHg、8週目160mmHg、12週目160mmHgと、Controlに比べ有意に血圧の上昇がみられた。以上の所見は、ヒトの臨床でみられる慢性拒絶反応の所見と酷似している。組織学的検索では、動脈内膜肥厚の所見に乏しく、細胞性拒絶反応もみられるなど、慢性拒絶反応と一致しない所見も多くみられた。しかし、本モデルは薬物投与を必要としない。また、再現性がよいなどの利点も多く不完全とはいえ慢性拒絶反応のモデルとして適当と考えられた。 このモデルを用いてthromboxoneA_2(TxA_2)synthetase inhibitor(CV4151)による治療効果を検討した。CV4151を10mg/kg/day連日投与した。投与は経口強制投与により行われた。しかし、血圧、タンパク尿ともに、抑制効果はなく、腎機能の悪化も防げなかった。治療効果の出なかった原因としてモデルにvascular changeが少なかったことも原因として考えられ、vascular changeのみられるモデルの開発が必要と考えられた。 今後は新しいモデルの確立も試みる予定である。
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