I.LHの脈動的分泌と血中LH、FSH、LH-RHテストに対する反応性との関係 各種排卵障害を有する婦人に対し20分置きに6時間にわたり採血し、血中LH、FSHを測定、又LH-RH100μg静脈投与に対する下垂体の反応性を検討した。LHの脈動的分泌(Pulse)が6時間で3回以下の排卵障害婦人では、LHのPulse回数と血中LH、FSH基礎値及び、LH-RHテストに対する反応性との間に正の相関を認めた。すなわち、これらの症例では視床下部からのLH-RH分泌減少が月経異常の原因であり、LH-RHによる下垂体のPriming効果が下垂体の機能維持に重要な要因となっていることが明らかとなった。一方、LHのPulse分泌が4回以上の症例ではPCOとPCO以外の第1度無月経の2群に分類できた。PCOは従来の診断基準を用いて診断を下したが、特にLH-RHに対する下垂体の過剰反応が特徴的であった。これに対し、PCO以外の第1度無月経症では、LHの基礎値がPCOに比べ低く、又LH-RHに対する反応性は正常月経を有する婦人の卵胞期初期の反応性しか維持しておらず、これらの症例では下垂体が脱感作されていることが示唆された。PCOでは下垂体はLH-RHに対し過剰反応を示したものの、LHのPulse頻度とLHの反応性の間には負の相関があり、PCOでも軽度ながら下垂体の脱感作が進行しつつあることが示された。 II.各種排卵障害婦人に対するLH-RHの脈動的皮下投与法の効果について LH-RH脈動的皮下投与法(Pulse療法)には、対象疾患により、その効果に差のあることが明らかとなった。上記のLH Pulseが4回以上の第1度無月経ではPulse療法は全く無効であり、又PCOでも治療回数を繰り返すうちに無反応となってしまうことが多くの臨床成績から明らかとなった。このようなLH-RH Pulse療法の効果の差の出現について、その原因的考察を行った。
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